びっくりしたこと

「キョン、楽しみね！　向こう行ったら何する？　もしかしたら大歓迎かもよ！！」



『２人の時間』


今日は学生の７割が楽しみにしているであろう修学旅行だ。

行き先？　行き先は日本の南の方、つまり沖縄だ。

あんな暑苦しいところ行って何するんだ？　っていうのが半年前の俺の意見。

今は、まあハルヒがいるならいいや　というのが俺の意見。

この変わりようはどういう意味か分かるか？

ではヒントをやろう。今は空港に行くため、学校からバスに乗ってるわけである。

俺は国木田と谷口と同じ班だから、２人のどっちかと一緒に座る必要がある。

だが、今横に座ってるのはハルヒだ。しかも車内なのに手まで繋いでる。

もう分かっただろう。俺はハルヒと付き合ってる。付き合いだしてかれこれ３ヶ月ほどたつな。

まあそんなわけで、結構楽しみにしている俺がいるわけである。

顔には出してないがな。ハルヒは思いっきり顔に出ている。

「キョン、よかったわね。あたしたち恋人で」

「ん、何でだ？」

「だってこんなことしながら行けるのよ！　嬉しいじゃない！！」

こんなこと

こんなこととは腕に抱きつき、または腕に抱きつき、または腕に抱きつき・・・


「キョンよ、まだ旅行始まって数十分しか経ってないんだぞ。もう少し抑えてくれ」

「うるさいわね、あたしたちの時間を邪魔しないで！　そんなんだからあんたは振られるのよ！」

谷口よ、すごい言われようだな。まあ当たってるが。抑えろ？ほっとけ！

でも、もう少し抑えてほしいんだがな・・・




空港に到着し、いろんな手続きをしている間も俺とハルヒは一緒に行動している。

もちろん手は繋がれたまんまだ。何か文句あるのか？　ないだろ？


飛行機の座席も、もちろん俺の横はハルヒだ。

「キョン、これは新婚旅行なんだから、楽しみなさいよ！」

ハルヒ、お前は気が早すぎだ。

というより声のボリュームをもっと下げてくれ。おそらく・・っていうか絶対前と後ろの座席に聞こえてる。

前に座ってる谷口が何やら唸ってるが飛行機酔いか？まだ離陸もしてないのに。



・・・
・・
・






「ＳＯＳ団もついに沖縄上陸よ！　そりゃ！！」

ハルヒ、声のボリュームを・・・

ほら、軍人さんがこっちを見てるじゃないか・・・


あっ、何でもないんで、俺たちに構わずお仕事をどうぞ・・・




「さあバスに乗れ。県内観光だ」

と教師の合図がかかり、またバスに乗る。

おいおい、バス→飛行機→バスって・・・　あと船に乗れば陸・海・空すべて制覇じゃないか・・・

ちょっとは休ませてくれよ、なあ・・・


「キョン、早くしなさい！」





・・
・


県内を観光する俺たち。

それにしても暑いな・・・　さっきからずっと雨降ってるじゃないか・・・


南国は嫌だな・・。

「キョ?ン?」

さらに暑苦しいことがあるんだよ。もう分かってるだろ？

「ハルヒ、嬉しいんだが、外で抱きつくのは止めてくれ。暑いんだ」

するとハルヒはムッっとし、「何よ、暑さなんて気合でなんとかなるでしょ！」と。

いや、お前に抱きつかれると精神ゲージが１桁になり、ＨＰが危険信号を出すから気合もヘチマもない。

つまり、一言で表すと・・・　幸せだ。


「あたしはね、キョンとずっと触れ合っときたいの。じゃないと落ち着かない」

ははは、何て可愛いやつなんだ。

「わかった。抱きついてもいいが、ちょっとは抑えてくれっよ・・・って・・・」

「やっぱキョンはやさし?♪」

全然抑えてねぇ・・・

「キョンよ、涼宮ばっかり見てるのもいいが、少しは景色を見ろよ。

ここまで来た意味がなくなるからな」

「谷口！！　あたしたちのことはほっときなさいって言ってるでしょ！

あんたそれ以上言ったら、帰りの飛行機であんたの席だけ空から落とすわよ！」

ハルヒならやりかねん・・　

「国木田・・俺なんかすごい怒られてるんだが・・」

「谷口は口を挟み過ぎなんだよ。あの２人は２人だけの世界なんだから見守らないと」

どうやら国木田は分かってくれてるようだな。感心感心。


その後も観光は続き、俺は・・っていうかクラス全体が疲労ムードだ。

その中で、１人だけ元気な奴が俺の横にいる。

「キョン、だらしないわよ。そんなんであたしのこと守れんの？」

「大丈夫だ。お前だけは俺が守ってやるからな。

今はお前のことじゃないから疲れてるんだ」

「そう？　頼んだわよ」

今物凄い恥ずかしい事を言った気がするが気にすんな。

俺は疲れてるんだ。何も言うな。言ったら二度と喋れなくなるぞ。気をつけろ。




やっとホテルに行く事になった。もう観光はこりごりだ。


バスに乗り込むと、ほとんどの奴が寝ている。

俺だって寝たいのだが、隣の奴が許してくれない。

「あんたが寝たら、つまんないし、あんたの横に座ってる意味ないじゃない！」


はいはい、寝ませんよ。寝ないから何か面白い話でも聞かせてください。

周りの奴を起こさないように静かに喋れよ。

「ふふん、やっとその気になった？

まあいいわ。じゃあ冥王星の話よ。あの星には絶対宇宙人がいるわ。

地球人はそれを認めたくないから、惑星から除外して、関係者だけで調べようっていうオチよ。

じゃないとせっかく教科書に載ってるのにこれからは習わないっておかしいじゃない！

これは絶対地球人の陰謀よ。ねえキョン、こういう場合は誰に文句言うの？

文部科学大臣に言っても意味ないわよね？もちろん日本の総理に言っても意味ないわ。

大体日本の総理が宇宙と何の関係があるって言うのよ。じゃあＮＡＳＡかしら？

でも、ＮＡＳＡは結構宇宙事業に携わってて、あたしもＮＡＳＡ好きなのね。

だから、文句言うのちょっと嫌なのよ。んでＮＡＳＡは避けたいなって考えてるわけ。

ということはロシアかしら？　だってアメリカと宇宙事業競ってたのロシアぐらいよ。

おかしくない？　だってあのアメリカと競うのよ。よっぽど勇気があるか、何か秘訣があるのよ。

ぜひその秘訣を教えてもらいたいわね。文句言った後に『教えてください』って言って教えてくれると思う？

多分よっぽどの馬鹿じゃない限り教えてくれないと思うわ。

だからね、あんたなんかいい方法考えて。

あっ、でもロシア語喋れる？

あたしが知ってるのは　ボルシチ、カチューシャ、ＡＫ　ぐらいなのよね。

キョンは馬鹿だからどうせ何も知らないと思うけど、一応聞いてみたわ。

ねえ、何か知ってる？

そういえばロシアって何であんなに広いのかしら？　あれも宇宙人の陰謀よ。

だっておかしいじゃない。あの広さは以上よ。東西に長すぎ。

狭いドイツにだって東西に分ける壁ができたのに、あんなでかいロシアには壁ができないのよ。

あたしが思うに火星人か金星人の仕業だと思うのよね。じゃないと・・・・・・・・・・」



えー・・・　ここら辺で切り上げたいと思う。

っていうか俺にも喋らせてくれよ。ロシア語なら・・・　すまん、ボルシチぐらいしか知らん。

「なあハルヒ・・って寝てるし・・」


あんだけ喋って疲れたのか、俺に寝るなと言ってた本人が寝ている。

何て幸せそうな寝顔なんだ。

バスの中はクーラーがガンガン。こんなとこで寝たら寒いぐらいだ。

俺は少しでかいタオルをハルヒの肩に掛けてやり、ハルヒの小さい左手を握る。

疲れたんだろ、１日目から飛ばしてたもんな。ホテルに着いたら起こしてやるからゆっくり寝てろ。

起きたらお前のさっきの話に付き合ってやるからな。

だから今からそのネタを考えるとするか。





続く


この話は続きます。

改めて愛の休憩としてご覧下さいね。では